歯周病は虫歯と同じく歯周病菌による感染症です。
昔の言い方では歯槽膿漏と言っていた歯周炎と歯肉炎の総称になっております。歯周病と歯周炎を同じように思っている方も多いようです。
また歯肉炎の方に「あなたは歯周病です。」と言うとものすごくおどろかれることがあります。間違っていないのですが我々も言葉に気を付けなくてはいけません。
歯周病を進行順に説明しましょう。
歯肉炎 → 軽度歯周炎 → 中等度歯周炎 → 重度歯周炎の順となります。
歯周病は読んで字のごとく「歯の周りの病気」です。
歯の周りの組織は大雑把にいうと歯肉(歯ぐき)と骨になります。つまりこの組織が病気になると歯周病と呼ばれるようになります。
この病気は外側から内側に進行していき、まずは歯肉が炎症をおこします。この状態が歯肉炎です。
さらに進行し、骨に炎症(骨が溶ける)が及ぶと歯周炎というようになります。
歯周炎はさらに進行度合いによって軽度、中等度、重度に分けます。
歯肉炎と軽度歯周炎(特に初期のもの)は区別はつきにくい場合があります。中等度歯周炎は少し歯が動きはぐきが腫れている感じ、重度歯周炎は歯がぐらぐらで腫れたはぐきから膿がが出てくるイメージでしょう。
虫歯菌と違い歯周病菌は種類が多くその進行度合いによって出てくる種類もかわります。またその働き(攻撃)は一匹でも効果があるのではなく集団となってはじめて効果がでてきます。その集団の形が歯垢(細菌塊、プラーク、バイオフィルムともいう)です。1ミリグラムの歯垢に10億匹の細菌が住み着いているといわれています。また歯垢は唾液中のカルシウムを取り込み石となっていきます。これが歯石です。歯石は歯垢を着きやすくする性質があります。
歯周病菌は元々お口の常在菌ですのでこれをゼロにすることはできません。ただ集団でしか働かないので集団を作らなければ悪さはしないのです。何か人に似てますね。
そういったことから歯垢を除去できれば歯周病は良くなるといえます。そのため歯周病の治療では歯垢除去(主に患者さんの役目)、歯石除去(歯科医、衛生士の役目)を行うのです。
ただし激しく進行した歯周病では歯の形態の複雑さから清掃できないところがでてきます。そういったところは麻酔下での歯石除去や外科的な処置が必要になってきます。
また歯垢の除去も我々の手伝いが必要になるでしょう。
歯周炎で溶けてしまった骨はそのままでは元に戻らないことから骨の再生治療が注目されています。
また歯周病菌が常在菌であることから、歯周病は一度発症すると、状態を良くすることはできても完治することはありません。そこで歯周治療が終了してもその状態を維持することが大事になります。
その方法がメインテナンスです。
その主体は患者さん自身での日頃の清掃に重点ががおかれます。そして補助として歯科医院における定期的な清掃があると考えてください。どうしても除去しきれないところがでてきますので我々がサポートすることになります。
また咬み合わせが悪かったり歯軋りやかみしめ、体調や環境、修復物の良し悪しなどで歯周病の進行が助長されることもありますのでそういったことの改善も必要になってきます。
咬み合わせの治療によって歯周病が良くなることもあります。
歯の位置が悪いと歯の周りの組織に栄養が十分に届かなくなります。すると抵抗力が弱くなり進行していきます。
このタイプの場合は歯の並びを良くすることで改善することがあります。
過剰な力によって進行してる場合は咬み合わせの改善で力のコントロールをすることができれば良くなることがあります。
通常の歯周治療と組み合わせれば効果は高まることでしょう。
よく患者さんで歯肉の溝のことを何でもポケットと言う方がいらっしゃいます。
これは間違いで健康なはぐきの溝はポケットとはいいません。また歯周炎によって深くなった溝を真性ポケット、歯肉炎によって深くなった溝を仮性ポケットといいます。カギは骨にあります。これが理解できればあなたも相当な歯周病おたくにまちがいなし。スタッフも一目置くことでしょう。